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ニューズレター 【上海通信】

【2021年7月】内部通報制度の勘所

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PDF版はこちら → 上海通信 2021年7月号.pdf 

 

上海マイツ(浦西JapanDesk)では、日常業務を通じ、日系中国現地法人(以下、「中国現法」とする。)の経営者あるいは日本親会社担当部門より、不正に関する調査や不正を未然に防止する会社管理の在り方について多くの相談を頂いています。上海通信20207月号では、直近3年間の日本上場企業の不正に関する適時開示(IR発表)が累計180件(20207月号作成時)を超える発表があった旨を寄稿しましたが、2020年度は63件、2021年度(本号作成6月時点)では27件が発生しています。

日本上場企業では、内部通報制度により不正事案が発覚したケースが散見されていますが、中国現法においては、内部通報制度が機能していないのではないか?と聞かれる事が多く、直接、政府部門に告発(密告)したり、SNSで公開するなど、内部通報制度による不正事案発覚は少ない傾向にあります。しかしながら、日本上場企業グループの経営環境において不正に注視する傾向は今後もより一層継続する事が想定され、加えて新型コロナの影響により中国子会社の管理監督方法が再考される中、中国現法の内部通報制度の実効性を高める対策は、不正を適時に発見する会社管理の在り方として有効な方法であると考えます。

そこで、本号では中国現法の内部通報制度の実効性向上に向けた勘所(検討事例)をご紹介します。

 

先ず中国現法の内部通報制度の実効性を考える上で、以下の3つの視点があります。

1.実効性を左右する検討視点

 ① 中国現法の労働環境を加味した制度としているか
   (例:社員同士の人間関係を重視する、不満があれば転職する、など)
 ② 中国現法への(日本親会社規程)適用のために十分な検討を行ったか
   (例:日本親会社の規程を中国語に翻訳して運用を開始した、親会社のサポートを得られない、など)
 ③ 中国現法で内部通報制度が浸透するための対応を行っているか
   (例:内部通報制度説明会、従業員からの宣誓書取得、不正事例の勉強会、など)

 

上記3つの視点に留意して内部通報制度を導入した事例では、少なくとも以下の対応が行われています。

2.実効性を向上させるための対応

 ① 中国現法への適用のための十分な検討

・中国現法を管理監督する日本親会社の主管部門が主導で内部通報制度の枠組みを設計した後、   現地事情を加味するため、中国現法でも制度導入プロジェクトの担当者を選任して内部通報規程・細則の全条文について検討事項を抽出し、中国現法に適合するか否かの協議・検討を重ねた。

 ② 複数専門家の知識・経験を活用

・内部通報制度の導入に際し、日本親会社の主管部門のサポートだけでなく、制度構築・導入に知識・経験を有する内部統制専門家や法律専門家なども関与させ、様々な観点から内部通報制度の条文内容検討や円滑な運用方法検討に役立てた。

 ③ 内部通報制度説明会の中日両言語での開催と宣誓書取得

・内部通報制度の説明会向けに研修資料を制作し、現地社員向け(中国語)だけでなく、日本人出向社員向け(日本語)の両言語で開催して、全社員が受講した。
・全社員から宣誓書(違反行為・不正目的利用の禁止、利用上の留意事項、誠実な対応などを記載した文書)を取得して、内部通報事案の円滑な調査環境を整備した。

  

特に上記事例では、内部通報制度の中国現法への適用のために、以下の検討が実施されています。

3.中国現法への適用のための検討事項(※一部抜粋)

項目

検討項目

検討内容

1

中国現法での規程等管理方針

・日本親会社の「内部通報制度規程」、「内部通報制度細則」について、中国現法の社内ルールではどのような位置付けにするのが適切か。

案1:新たに規程等を制定する。

案2:基本的には親会社規程等に従うが、中国各社で特徴的な事項は別途追加細則を制定、又は「細則」のみ読替細則を制定する。

2

通報の対象者と

匿名性

・取引先、退職者及び役員・従業員・退職者の家族も通報対象者の範囲に含めるべきか。

・幅広に通報を受ける・通報者の保護強化の観点等からの匿名通報の選択もあれば、当該社のように、内部通報制度の悪用排除等を重視されて実名通報を選択されるケースもあるが、いずれを採用すべきか。

3

違反行為の例示

・横領・着服、窃盗、贈収賄、不正会計、粉飾決算、偽装表示(消費期限・賞味期限の改ざん、産地偽装等)、暴行・脅迫・恐喝、飲酒運転、お客様・役職員の個人情報の漏洩、インサイダー取引、各種ハラスメント、契約外勤務・時間外労働・休日休暇取得に関する違反などが挙げられるが、これ以外にも含める事項はないか。

・従業員が理解しやすい整理・分類方法はないか。

4

制度導入目的

・制度導入目的には、「従業員」にっとっての自分事になる表現(例:「ステークホルダー(利害関係者)の利益を守るため」)を含めるか

・伝達手段を検討する必要はあるか。

5

通報の受付窓口

・通報の受付窓口として外部機関を利用する場合、事前に何を確認すべきか。(どのような流れで通報内容を伝達するか、通報内容確認通知・対応方針通知・調査進捗状況通知などの伝達範囲はどこまでか)

6

調査協力義務

・中国現法における労働契約等において、従業員に対し当該義務への協力を仰げる状況であるか。(日本的慣行とは異なる現地事情を加味した運用を検討する事が重要)

7

是正措置・処分

・中国現法の関連規程等も参照し、労働争議に発展する可能性を勘案して辞任勧告・懲戒処分を行う場合、事前検討すべき事項に何があるか。

8

通報者・調査協力者の保護

・中国法令等に関し、通報者保護に関連する法令等は有るか。

・中国特有事項がある場合、条文または細則に含めるか。

9

周知・教育

・周知・教育はどの部門がどのように実行するのが適当か。

・頻度はどの程度で実施すべきか。

10

中国法令等の最新動向による影響

・中国法令等の最新動向で、個人情報保護強化の動きが進んでおり、公開草案が出ているが、内部通報制度にどのような影響があるか。

 

上記は中国現法の内部通報制度の実効性を高める1つの事例ではありますが、中国現法に適合するか否かの協議・検討が細部に渡っており、具体的な運用イメージを深めつつ、現地事情を加味する事が肝要である事の教訓となります。

 

中国現法の従業員が、「自分を守るため、同僚を守るため、会社を守るため」に、また、「従業員各人の更なる意識向上(誠実な業務遂行)を図るため」に、ぜひ現在の内部通報制度の実効性を確認頂き、その見直しや新たな導入の参考にして頂ければ幸甚です。

 

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